落武者戦闘服の雑多な日記

40代サラリーマンの雑多な日記です。

『ホームレス大学生』/田村研一

 

こんばんは。落武者戦闘服です。
麒麟・田村裕さんの兄、田村研一さんが書いた『ホームレス大学生』を読みました。

弟の『ホームレス中学生』が“明るい再生物語”だとすれば、
兄の視点で描かれるこの本は、若いながらの現実的な苦労と人間くささが詰まっていて、ぐっと胸に響きました。

彼女に支えられたり、バイト先や近所の人の厚意でなんとか生活をつないだり。
周囲の人の優しさに助けられながら、必死に生きていく姿にはリアルな重みがありました。
そして何より、兄弟の結束が感じられる場面が多く、暗い話なのにどこか温かさを感じます。


14年ぶりの父との再会

特に印象的だったのは、14年ぶりに父親と再会する場面です。
ある意味“捨てられた”とも言える状況だったのに、父親は何度も何度も「ありがとうな」と繰り返す。

普通なら恨み言のひとつも出てしまいそうな場面なのに、
研一さんは怒りではなく、“生きて再び会えた”ことをただ静かに受け止めている。
「お兄ちゃん」でも「家長」でもなく、一人の息子として親父と向き合う姿がとても印象的でした。
そこには時間の重みと、家族の切なさがにじんでいます。


兄としての葛藤と本音

作中で心に残ったのは、研一さんが弟・裕さんに言ったこの一言。

「裕、生まれ変わっても、また兄弟でいような。でもその時は、長男と次男替わってくれな」

この言葉には、お兄さんとしての誇りと、報われなかった夢への悔しさが込められている気がします。
研一さん自身も芸人を目指していたけれど、弟が同じ道を選んだことで、その夢を譲るようにして諦めた。

兄として弟を支えたい気持ちと、自分も同じように夢を追いたかった気持ち。
その両方の間で揺れる葛藤が、「替わってくれな」という一言ににじんでいます。
恨みではなく、羨望と愛情が入り混じった、兄弟ならではの深い絆を感じました。


まとめ

『ホームレス大学生』は、貧困や家庭崩壊を描いた作品でありながら、
決して暗いだけではなく、人の優しさや家族の再生が静かに描かれています。
読後には、「どんなに離れても、家族はやっぱり家族なんだ」と感じさせられました。