落武者戦闘服の雑多な日記

40代サラリーマンの雑多な日記です。

『ブラックジャック創作秘話』/吉本浩二・宮崎克

おはようございます。

落武者戦闘服です。

今回は手塚治虫の代表作のひとつブラックジャックの創作に関わる漫画。

ブラック・ジャック創作秘話』を読んでまず圧倒されたのは、手塚治虫漫画に対する尋常でない情熱と熱量です。ひと月に何本もの連載を抱え、編集者が常に張り付いて原稿を待つような状況でも、妥協せず何度もリテイクを繰り返す姿は、もはや狂気の域。そんな天才のもとでは、周囲の凡人であるアシスタントや編集者は翻弄されるのですが、同時にその熱狂的な創作環境が、後世に残る作品を生み出す原動力になっているのだと実感させられます。

さらに手塚は漫画だけでなくアニメ制作にも進出し、そこでも異常なまでのこだわりを見せます。24時間テレビ向けに作ったアニメでは、放映に間に合わせるために必死で作業を進めつつも、クオリティに納得できず、BDやDVD化もない時代に放送後3か月かけてリテイクを行うほど。表現者としての徹底した追求心は、常識を超えるものでした。

しかし、こうした熱量は経営者としては必ずしも合理的ではなかったのでしょう。創作に取り憑かれた天才の光と影、狂気のような熱量と現実とのギャップが同時に浮かび上がり、手塚治虫という人物の複雑さを強く感じさせます。読後は、漫画やアニメの面白さだけでなく、天才が生み出す作品の裏側にある血の滲むような努力と、周囲の人々の奮闘まで思い浮かべずにはいられませんでした。