企業のトップまで勤めた人物がギャンブルに如何にのめり込み、自身の会社の資産にまで手をつけたかを綴る読みごたえあるノンフィクション。
youtubeのショート動画で著者の動画を見かける機会が何度かあり、amazonの書籍読み放題のサブスクサービスで見かけて手に取った一冊。
著者は日本有数の製紙会社の創業一族に生まれ、父親の跡を継ぎ社長まで勤めた人物だが、カジノで100億円以上の借金に子会社の資金をつぎ込み、背任事件で有罪判決を受けた人物。
自身の仕事論にも触れつつ、事件に至るまでの製紙会社での仕事や交友録についてのパートとギャンブルに如何にのめり込み、また逮捕後の刑務所での生活に触れるパートからなる。
前半の仕事に関わるパートを読むと、youtubeの動画でも感じたが論理的に、また真摯に仕事に向き合う姿勢に、なぜこのような人物がギャンブルにのめり込むのか、不思議に思えてくる。
以下など自分の仕事の姿勢を思い返して身につまされる一文だった。
問題は、結果がでなかったときに抽象論でお茶を濁すことだった。すでにのべたように、大切なのは結果が良かろうが悪かろうが、自分の頭で考えて仕事をする姿勢だ。
そんな著者がギャンブルを始め、当初は100万前後の(とはいえ一般人からすると破格の金額ではあるが)掛け金で遊んでいた。そこから転機になるのが、カジノ業界に存在するジャンケット(仲介業者)と呼ばれる存在。ジャンケットの仕事はVIP客をアテンドし、カジノで遊んでもらうようコンシェルジュのような仕事までこなす。カジノを運営するホテルもVIPとのコネクションを作るのはなかなか難しい、そこを仲介するのがジャンケットの仕事で、VIP客がカジノで落としたお金の一部がジャンケットに入る仕組みになっている。ジャンケットの仕事は多岐にわたり、ホテルや飛行機の手配に始まり、ヘリコプターで夜景を見たいといえばすぐ予約をいれて遅れたり、またカジノで遊ぶVIP客の連れがカジノに興味なければ連れのエスコートまで面倒を見てくれる。すべてはVIP客が気持ち良くカジノでお金を使ってくれるようお膳立てを図ってくれるのだ。
このあたりのカジノ業界の裏側やその他にも刑務所や検察での取り調べなど委細がこのノンフィクションには描かれている。
自分は如何に非日常の世界を知れたり、感じられるかが、趣味や触れる媒体を選ぶ際の基準になっているが、そういった意味でこの本はとても楽しめた。
次作もでているようなので、また機会をみて読んでみようと思う。