2032年、夢の世界はリアルと並ぶ重要なエンターテイメント産業となっていた。人々は「夢のサブスク」サービスを通じて、有名人の人生を夢で追体験することができる。誰でも憧れのアーティストの視点で、彼らの栄光や苦悩を味わえるのだ。
その中でも音楽界のレジェンド、レイ・スカイラーの人生がついに配信されるというニュースは、世界中を熱狂させた。レイは謎めいた存在であり、素顔をほとんど公にしてこなかった。そのため、彼の人生の夢を体験できるというのは、一大イベントだった。
レイは夢を公開するにあたり、「配信したくないエピソードを除外する」設定を利用するはずだった。しかし、設定を誤り、彼が最も隠したかった過去までもが配信されてしまう。
それは、若かりし頃、彼が信頼していた女性を裏切った過去だった。
視聴者たちは、その夢の中で、彼がある女性を利用し、彼女のキャリアを踏み台にしたことを目の当たりにした。彼女の涙、絶望、そしてレイの冷たい表情——そのすべてが鮮明に再現され、ネットは大炎上した。
レイは謝罪のコメントを発表したが、皮肉にも、その事件をきっかけに彼への親近感が生まれた。人々は「完璧なスター」よりも、「過ちを犯し、それを背負って生きるアーティスト」に共感を覚え、視聴回数はさらに跳ね上がった。彼は「伝説の人間」として、再び脚光を浴びることとなった。
——しかし、レイの最後は突然訪れた。
炎上の原因となった女性が、レイの再浮上を恨み、彼の前に現れたのだ。
「あなたはすべてを手に入れた。でも私は、あの時から何も変わらなかった。」
そう言うと、彼女はレイを刺した。
鮮やかなステージ衣装が赤く染まり、レイはその場に崩れ落ちた。
世界は衝撃に包まれた。突然の死、悲劇的な最期——そして、そのニュースが再び彼の名を不滅のものとした。
皮肉なことに、彼の死後、レイの人生のサブスク視聴回数は急上昇し、今もなお増え続けているのだった。
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おはようございます。
サブスクと未来をテーマにショートショートでした。